夢・光・音

日々の生活の中で生まれてくる想いや感情を詩や文章などで吐き出そうと思います

救済

2週間前に学生時代のある知人から連絡があった。

10年以上振りだったので、ビックリしたが、思い出話や近況など話せるかと思い、話を聞いていた。ただ彼はあんまり調子が良くないらしく、憔悴しきっていた。そして、過去の自分に対する彼の行状をしきりに謝っていた。自分がほとんど忘れていたことを繰り返し謝る彼に困惑したし、今の彼の追い詰められた情況が感じられて、苦しくなった。なんて言えばいいのか、わからなかった。相手を尊重して、傾聴していたけれど、どうすればいいかまるでわからなかった。

電話を掛けてきた彼がもう切りたそうだったので、区切りがよく、話が落ち着いたところで、「ありがとうございました」と僕は言い、「本当にすみませんでした」と震える声で、彼は言っていた。最後まで噛み合わなかった。わずか5・6分の通話だったけれど、長くて、濃かった。

どうすればいいか、わからなかった。何を言っても虚しく軽く響く気がした。これでよかったのだと思う。

それからしばらくして、僕は彼を着信拒否にした。いい加減なことはできないと思った。相談したある人に「着信拒否はやめてあげたら」「医療や福祉に繋げてあげたら」と言われて、一時は着信拒否を解除したが、彼が基本的に悩んでいることはそういうことじゃなくて、むしろ「魂」の問題なのだと思った。だから、彼を尊重するということが僕にとっては着信拒否をするということだった。

どこかで真面目に生きるというのは悩み続けるということなのだと思う。そして、たぶん自分の「魂」を救済できるのは自分自身だけなのだと思う。ただ、あの時私と彼の間には何かが架かったと思う。そう思っているのは僕だけじゃなく、彼もきっとそうだ。