育てること、祈ること
自分も35で、それなりの年齢とも言える。最近少しずつ考えるようになったことは、自分もいつかは死ぬということと人を育てるのが好きだということだ。
作家という仕事もいろいろな役割があると思うが、重要なものに、これからの若い人に、自分が勉強や経験を通して学んだことを物語を通して、伝えるというものもあると思う。
若い頃は人間のことも社会のことも自分自身のこともろくにわからずに悩むし、正しいことをまっすぐに伝えてくれる大人は少なかったように感じる。
自分はそういう時期によく本を読んでいた。そして、それもあってか、一応全うな大人になれたと思う。自分が獲得した知恵の中に、自分だけが伝えられるものもあると思う。
「文学」が仕事という意識は徐々に芽生えてきて、責任も感じるようになってきた。そして、それは他の仕事をする時にも適用される。言行一致は難しいけれど、本を読んで獲得した叡知を実生活で生かせていないのなら、机上の空論になってしまう。綺麗事で終わらないように、これからも誠実に生きて、自分の言葉を本当の言葉にしていきたい。