あの時、僕は半ば狂っていた。
一人の女性に夢中になりすぎていた。
いや、一人の女性というよりも僕の妄想が作り出した理想化した完璧な女性に魅了されていた。
彼女の帰りを2月の寒空の下、彼女のマンションの前で何時間も待っていた。
チョコレートを渡すために。
何度も言う。
俺は狂っていたんだ。
結局会えなかったし、雨が降る寒空の下に何時間もいたから、肺炎になりかけたけど、今思えば、あれは通るべき道だったのかもしれない。
そのことを思い出す時、恥ずかしさと寂しさがつきまとうけど、不思議と後悔はしていない。
通るべき道だったのだ。
あの出来事があったから、今の僕がある。
人生、そんなに悪いことばかりじゃない。
なぜか今、そう思う。