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夢・光・音

日々の生活の中で生まれてくる想いや感情を詩や文章などで吐き出そうと思います

その2

もう一人の親友は19歳年上の只木さんだ。只木さんは熱心なクリスチャンで、哲学や文学にも造詣が深い。和也は20歳の頃から文学を志しているのだが、只木さんの指摘やアドバイスはいつも参考になったし、励ましにもなっていた。只木さん自身も詩や日記を書くのだが、それも大したレベルだった。只木さんの書く詩は、自分をきちんと見つめ抜いた人だけが描ける中立性や優しさ・悲しさにあふれていた。
「佐々木さんは今みたいなペースで書き続ければきっとプロになれますよ」
と只木さんは和也が自分の書いているものに自信をなくしている時に、必ずといっていいぐらい言ってくれた。和也は志しているとはいえ、自分がプロになれるなんて思わなかったけど、只木さんにそう言われるとやる気がでたし、自分の書いているものも捨てたもんじゃないと思えた。
只木さんと出逢ったのは8年前に精神病院に入院した時で、二人はお互いが文字通りどん底の時に出逢った。同部屋だった只木さんが和也に声をかけたところから関係が始まった。和也は最初只木さんに快い印象を持っていなかった。手はほとんどいつも震えていたし、喋り方が独特で何を言っているか、はじめはわからなかったからだ。宗教的な話も多く、そういう話題になじみのなかった和也はおそれすら感じた。
それでも、退院後も定期的に会うようになって、只木さんが考えていることや感じていること、話そうとしていることが段々わかるようになってからは二人の関係性は段々温かいものになっていった。そして、只木さんも和也の「価値」みたいなものを認め始めていた。
「佐々木さんの一番良いところは辛い時も不幸な時も常に「希望」があるところです。そこを大事にしていけば、絶対に大丈夫ですよ!」
とよく言ってくれた。
年は19も違うが、只木さんとは不思議と同じ目線で話せた。それはたぶん只木さんの謙虚な人柄によるところが大きいのだろう。只木さんは全く偉ぶるところがなかったし、人生の先輩面するところも全くなかった。それでいて、いつも前向きだったし、自分自身と人生をよく知っていた。いろんな人生経験を経た只木さんの言葉は独特だったり、個性的すぎて、理解できないことも多いが、それと同時に含蓄があって、説得力があった。キリスト教信仰に裏打ちされた、力強い前向きな言葉は何度も和也を励ました。
「大丈夫です。きっと希望が待ってます!」
「苦しみは喜びに変わります!」
「きっと今の努力が実りに変わる時が来ます!」
など。他の人が言ったら、気休めに感じられる言葉も只木さんが言うと真実の響きがこもっていた。
和也は二人の親友のおかげで、失恋の苦しみを乗り越えられたし、今までの幾多の苦難や絶望の夜をやり過ごしていくことができた。そして、二人のおかげで、仕事や文学を頑張ることができた。