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夢・光・音

日々の生活の中で生まれてくる想いや感情を詩や文章などで吐き出そうと思います

この前のとは別の2ヶ月くらい前に書いた読み物、載せます その1

麻美は言った。
「あなたとは付きあえない」
予想していた答えとはいえ、和也は傷ついた。何度フラれても、慣れることはない。「俺はモテないんだ」という刻印がより深く・厚く自分の心に刻まれた気がした。
海沿いの公園で告白し、最寄りの駅まで並んで歩いた。気まずかったが、気まずいだけの空気でもなかった。二人の間の空気には親密さすら漂っていた。
「和也のこと、全然嫌いってわけじゃないんだよ」
「うん」
「むしろどっちかって言ったら、好きだよ。でも、付きあうことはできない」
「うん」
「なんかそういう対象じゃないんだよね。そういうふうには見れないんだよね」
「俺には何かが欠けてるのかな?」
「うーん、どうだろうね。わからない…」
「うん。たぶん何かが欠けているんだ」

和也は麻美にフラれてから、3ヶ月ぐらいは落ち込んでいた。俺は誰にも愛されないんだとかこの先いいことは一つも起こらないとか後ろ向きなことばかり考えていた。
それでも時間が失恋の痛手を癒したし、和也には仲間がいた。中でも二人の親友は和也がどん底の時に寄り添ってくれた。
一人はアキラだ。アキラは和也の一つ年上で、デイケアという精神の病気を抱えた人が日中の居場所として、または就労へのステップとして利用する病院内で行われているプログラムで出逢った。あれから5年が経つ。和也もアキラも5歳年を取った。その間に二人共に様々なことがあったし、挫折し、傷つきながら、助けあって、乗り越えてきた。困難のたびに二人の絆は強固になった。
「お互いいろんなことがうまくいかなくても、80の時も一緒にいられたら、それだけで幸せだよね」
とアキラが安い居酒屋で麦焼酎をのみながら、ボソッと言ったことがあった。その言葉は何気なく言われた分、真実がこもっていた。和也はアキラと一緒にいると、時間を忘れることがよくあった。会社のくだらないミーティングは一時間でも退屈で、何度も何度も腕時計を見るというのに、アキラと会って、カフェや居酒屋で話していると、あっという間に終電の時間になってしまう。それぐらいアキラとは馬が合うし、出逢って5年経っても関係は冷めなかった。5年経って、落ち着いたり、熟成はされたが、二人の関係は冷めてはいなかった。本当の友情とは一時的に危機的な状態になったり、あつれきが生じても、決して途切れない関係のことを言うのではないだろうか(二人が現実で会わなくなったとしても)。